メルヘンの丘

知らないとマズイ!? 北海道観光を120%楽しむために「守るべきこと」3つ【獣医師監修】

2021.11.13

目の前に広がる広大な大地、美味しい食べ物、温泉、アクティビティ……。北海道観光は北海道外だけではなく、道内の人にとっても魅力がいっぱいです。しかしながら、その魅力的な場所に、気づかずして迷惑をかけている……なんてことも。

今回は、北海道を愛するみなさんにこそ知ってほしい、観光する際に守ってほしいルールを獣医師の白戸綾子さんに教えていただきました。みなさんが好きな北海道の景色や食べ物を守るために必要なことなので、よく覚えておいてくださいね。

<監修者プロフィール>
獣医師 白戸綾子
帯広畜産大学卒。製薬会社に勤務した後、農林水産省へ。牛・羊・山羊の診療と飼養管理、飼料検査、牛個体識別システム運営、乳用牛牧場の管理運営等を経験。農場HACCP認証協議会主任審査員、JGAP審査員。

ルール1:基本は「遠く」から、「見て」楽しみましょう

北海道には、魅力的なシャッタースポットがたくさんありますよね。ドライブしていると牛や馬などが放牧されていたり、ヒマワリや菜の花が咲いていたり……。しかし、牧場や畑は私有地であり、勝手に入ってはいけないということをご存じですか?

立ち入りが制限されているのは、私たちが知らない間に病原体の運搬者にならないためです。靴底には土などの汚れとともに病原体が付着します。その靴で畑や牧場に立ち入ってしまうと、病原体が持ち込まれるきっかけになってしまうかもしれません。

私たちが家畜に触ることで人間には影響のない病原体が彼らに移動し、深刻な病気をもたらす可能性もあります。1つの牧場で伝染性のある病気が発生してしまうと、病気の種類によってはその牧場の症状が出ていない家畜はもちろん、周辺の牧場の家畜もすべて殺処分となる可能性があるそう。反対に、家畜には問題ない病原体が私たちには危険なこともあります。許可を得て家畜に触る場合は、その前後でしっかりと手洗いをするようにしましょう。

病原体は、家畜はもちろんのこと、野菜などの農産物の病気の発生原因になる可能性も。一度侵入した病原体を除去するのは、とても長い時間と手間がかかります。病気の種類によっては、収穫できる作物の量がとても少なくなってしまうこともあるんだそう。

畜産・農産物を作る生産者の方はさまざまな努力をして私たちにおいしい食べ物を届けてくれています。その努力を知らず、無自覚に踏みにじってしまわないよう、私たち観光者も「無断で立ち入らない、触らない」「その牧場・農地のルールに従う」など自分が加害者にならないよう気をつけましょう。

ルール2:安易な餌付けはNG!野生動物は大自然のなかで自分の力で生きています

北海道をドライブしていると、豊かな自然のなかにキタキツネやエゾシカなどの野生動物に遭遇! なかなか近くで見ることができない彼らを、できるだけ近くで写真に収めたくなったり、痩せていてかわいそうだから、と餌付けをしたくなったりする気持ちはごく自然なのかも。

でも、彼らの命の危険を減らすため、餌付けはやめましょう。

野生動物は大自然のなかで自分の力を頼りに生きています。しかし、自分で苦労してエサを見つけるより人間からもらう方が労力が少なくてすむため、一度餌付けされた動物は簡単に“人や車=エサ”と認識し、結果として車を恐れなくなってしまうそう。

これにより、交通事故により死んでしまう“ロードキル”が後を絶ちません。たとえば、車を見ると近づいてくるキタキツネ。すでに餌付けされ、エサをねだるために近寄ってきているのかも……。

また、ヒグマのような大きな動物が「人間に近づくとエサをもらえる」と認識してしまうと頻繁に市街地に出没するようになることも。人間を悪意なく傷つけてしまう可能性があるため、人間と動物の距離の一定の基準をこえると射殺されることもあります。一時の感情からの、安易な餌付けが野生動物の命を奪ってしまうことがあるのです。

ルール3:フラッシュを使わないで!動物の目はとてもデリケート

競走馬の生産牧場が多い日高地方や胆振地方では「フラッシュ撮影禁止」の看板をよく目にすると思います。カメラのフラッシュのような、強い光を浴びせられると動物はパニック状態になってしまうんだそう。とくにサラブレッドのようなデリケートな家畜は、落ち着くまで暴走することがあり、その際に柵に激突するなどして、競走馬として致命的な怪我を負うこともあるとか。

サラブレッドに限らず、ほかの家畜や動物の写真を撮るときはフラッシュを使わないようにしましょう。携帯電話のカメラなどは設定がオートフラッシュになっていることもあるので、十分注意が必要です。

話は少し変わりますが、夜にエゾシカに遭遇すると車の近くにいるのに逃げない、ということがありますよね。「なんで逃げないの?」と思うかもしれませんが、彼らは車のライトのような強い光に照らされることで、一時的に動けなくなってしまっているそうなのです。これは夜にシカとの接触事故が多い理由の1つのよう。人間には問題とならない光でも、動物たちにとっては強い刺激になってしまうことを心に留めておきましょう。

車と動物との接触事故は、時として人間側が深刻な怪我をすることがあります。夜間の運転には十分注意が必要ですね。

 

これらのルールは北海道観光を楽しむためだけでなく、日本全国共通のものだと思います。

日本の農畜産業や野生動物を守っていくために、まずは“知る”ことから始めてみませんか。

※この記事は公開時点での情報です。
※本記事における医師および各専門家による情報提供は、診断行為や治療に代わるものではなく、正確性や有効性を保証するものでもありません。また、医学の進歩により、常に最新の情報とは限りません。

【参考】
家畜伝染病予防法 – 日本獣医師会
クマやサルなど野生動物への餌付け防止について / 環境省

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